紅芋タルト論争から見る商品PR軸のズレ

紅芋タルト論争から見る商品PR軸のズレ

 

どうもこんにちわ、INAZOOです。

 

 

まずはこれを観てください。

 

 

 

本日徐にSNSのタイムラインを眺めていたら、このTVCMに関する記事が僕の視界に入り込んできました。この動画については後に触れます。

 

ちなみに皆さん、紅芋タルトはご存知でしょうが、それがどこの会社の商品なのか、改まって意識したことってあります?とりあえず僕自身、移住するまでは意識したことがありませんでした。

 

また、『紅芋タルト』なのか『紅いもタルト』なのか『べにいもたると』なのか『紅芋たると』なのか・・・。この辺あやふやじゃないですか?いわゆる商標絡みの問題ですが、正式名称がなんだろうか知ったことではない、というのが消費者の正直な感想でしょう。

 

 

正しくは、『紅いもタルト』です。

 

 

 

 

スクールオブ俺
うん、

控え目に言っても、

どうだっていいなww

 

 

そうです、どうだっていいのです。紅芋なのか紅いもなのか。こんなものどっちだっていいのです。その証拠に観光客が選ぶのはあくまで言霊として流通し、認知されている『ベニイモタルト』(※敢えて音が重要という意図でカタカナ表記しています。)です。

 

一部の紅いもタルトマニアの方には申し訳ありませんが、素人見では味も見た目も違いが全く分かりません。成分や製法についても然り。

 

 

そこで、今回はこの『ベニイモタルト』を巡る、消費者を置いてきぼりにした不毛な争いと、プロモーションの迷走具合について批評していき、沖縄振興という観点から有益な商品展開やプロモーションとは何かという点についても触れていきたいと思います。

 

以下、本文では面倒くさいので「紅芋タルト」に統一します。

 

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元祖なのか、二番煎じなのか。

沖縄の紅芋タルトを語る上で、何気に有名なのが2007年に発生した、二大紅芋タルトメーカーによる「紅イモ菓子類似品訴訟」です。

 

端的に言うと、元祖を謳っている会社が後発だろう会社を訴えたわけですね。

 

時に「沖縄旅行は毎年します!」とか、「沖縄好きすぎて沖縄情報は常にウォッチしてます★」みたいな人であれば分かるかもしれませんが、当事者たる二つのメーカーについて具体的に覚えていたり、意識している人っていないんじゃないですかね。

 

それが、

御菓子御殿とナンポー。

 

前者が元祖を謳っていて、後者が訴訟を起こされた側です。訴訟内容としては、ナンポーの販売する『べにいもたると』の販売差し止めと1億円の損害賠償でした。

 

同じ名前だからということでどれだけの機会損失があり、この額にどれだけの妥当性があるのかは知りませんが、正直この裁判・・・

 

マジでどうだっていいでしょ?

 

まずは読者の方々にお伝えしたい。この完全に消費者を置いてきぼりにした論争の不毛さ、そして以降のプロモーションにおいても、御菓子御殿が『元祖』を執拗なまでに訴求することがいかに商品プロモーションにおいて駄策かということを。

 

世の中にある様々な商品について、元祖であることにどれ程の価値と差別化要素があるでしょうか。むしろ、差別化すべき点がない時に取り上げられる要素が『先か後か』ではないでしょうか。

 

例えば、楽天かAmazonか、どちらが先にサービスを始めたかによって利用するサービスって変わりますか?または、ファミマとローソンでどちらが先に創業したかが、今日の帰りに寄るコンビニを左右しますか?

 

しませんよね。

 

つまり、御菓子御殿とナンポーは本質から逸れた部分で争い、そこに焦点を合わせ過ぎたプロモーションと商品展開に依存してしまい、ブレークスルーする機会を逸脱しているのです。

 

商品をヒットさせ、沖縄ブランドや同県の産業を盛り上げるのであれば、まずは何を差し置いても“インサイト”を意識すべきでしょう。つまり、消費者はどう捉えているのか、消費者は何を考え紅芋タルトを購入しているのか、それは能動的な意思だろうか?大方、定番化してしまった紅芋タルトに嫌気は差しつつも消極的な安牌として、手に取っているのではないでしょうか。

 

これでは、菓子メーカーの名が廃りますね。

 

さて、次項では御菓子御殿とナンポーが最も見落としてはいけないはずのもの、消費者の利益の追求に立ち返るべき理由や現状の考察を交えて論じていきます。

 

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疑わしきは消費者の利益

先述した通り、不毛な訴訟により露呈した「紅芋タルトを巡る論点のズレ」ですが、これがいかに大罪かというと、その注力すべき論点がズレているあまり、広義の意味で大きなチャンスロスを招いているということです。

 

昨年、入域観光客数がハワイを超えたことで話題な沖縄県ですが、この客数の推移に大きく貢献しているのがインバウンド客です。そしてその中で特に多いのが中華圏や韓国等のアジア圏から来られる方々ですが、彼らがこぞって買っていくお土産の大半が、ナショナルブランドであったり、化粧品や薬品なのです。

 

要するに、沖縄のメーカーが直接潤うわけではないのです。

 

インバウンド客からしたら沖縄に来るというよりは日本に来るという感覚なのでしょうね。それは理解できます。むしろ一番近い日本という物理的好条件を活かす以外に沖縄の未来はありません。

 

しかし、そういった物理的優位性の恩恵を受けているにもかかわらず、沖縄の企業があまり潤わない、あるいは潤う機会を逸しているのは何故でしょうか。

 

それが、正に沖縄発の商品開発やマーケティングが弱小な証でしょう。

 

つまり、内輪でどっちが元祖がどうかなんて言ってる場合ではなく、沖縄ブランドであれば一蓮托生という立場を前提とし、真にインバウンド客や国内客にとって価値のある商品とは何か、彼らが何を求めて沖縄に来ているのか、何を持って帰ることが彼らに利益をもたらすのか、これを考え抜かなくてはなりません。

 

僕だけではないはずですよ、沖縄=紅芋という相関関係に嫌気やマンネリズムを感じている消費者は。そこに目を向けないといけません。二色の紅芋タルトを作るとか、そういう話ではないのです。

 

ここで僕からの提案です。本当に消費者の意向に注力していく気があるのであれば、もう『元祖』とかそんなフレーズを各種露出物から取り除べきではないでしょうか。

 

もっと推し出すべき要素があるはずです、むしろ、ないのであれば異なる価値を模索しないといけません。

 

勝負すべき場所は

では、いったい何がもっと推し出すべき要素なのか。ここからはどちらが先か後なのかといった元祖に焦点を当てることを一旦辞めます。なぜならば至極無駄であるから。

 

ではまず、そもそも紅芋タルトは何故ヒットしたのか。ここを各メーカーは客観的事実に基づいて捉えられているでしょうか。つまり、一時は沖縄を代表する菓子となり、お土産市場を席捲した理由を紐解き、その再現性やパターンを見出すことは、次なる打ち手の大いなるヒントになるものです。あくまで僕の仮説ですがお付き合いください。

 

紅芋タルトのヒットの理由は、『ギャップと非日常』ではないでしょうか。そして、この点を留意して次なる勝負する場所、カテゴリを模索すべきだと僕は考えます。

 

まずはギャップについて。

 

沖縄は高温多湿の熱帯地域ですので、そもそも水分を持っていかれるような食べ物を現地で食べたいと思う人は少ないのではないでしょうか(県民における歴史上、栄養素上の観点は除く)。当然マンゴージュースやシークワーサーシャーベットのようなものを食べたくはありませんか?これらはいわゆる王道と呼べるカテゴリで、沖縄という土地や環境と相当因果関係があり、結びつき安い特徴があります。具体的な商品でいうと、オリオンビールがそれに当たります。オリオンビールは高温多湿な場所で飲むのに最適なサッパリした薄めの味が特徴的ですよね。これを東京で飲んでも味が妙に薄くて拍子抜けする、なんていうケースが多々あります。

 

ギャップに話を戻しますが、類似する例でいえば、サーターアンダギーにも言えることです。何でこんな水分を持っていかれるようなものを食べるのか、と思うくらいの代物が沖縄土産として観光客に受け入れられています。これは正に沖縄という土地や環境との因果関係が見えづらいギャップではないでしょうか。ちなみに、ここでいうギャップは商品そのものが存在する因果関係ではなく、商品を食べたくなる、買いたくなるという点における因果関係において生じるものです。

 

要するに、○○だから●●が欲しくなる、という方程式とは逸脱し、そこに何等かの因果関係が見出せない構図です。これがギャップです。

 

東京でサーターアンダギーが作られていたとしても、勿論食べませんよね。何が悲しくて都内であんなボソボソする食べ物を食べないといけないのでしょうか。さらに、東京よりも比にならないくらい暑くて湿度のある沖縄でサーターアンダギーを食べるのって、普通だったら尚の事ありえないですよね。

 

このギャップが従来のお土産のマンネリズムを打破し、受け取る側の喜びや感情の変化を誘発するのです。ごめんない、味についての言及はしません。紅芋タルトの味についても、このギャップにより3割増になっていると確信してるからです。このようなギャップ、意に反してであったり、自分のロジックとは異なるアプローチは、時に人の味覚や感想をもプラスに変えてしまいます。無論、味が最低限担保されていることが前提です。味が悪ければ、ギャップどころかそのまま不味いもの認定まっしぐらですので。

 

続いて、非日常について。

 

沖縄で買ってきたのだから非日常だろ、と言われればそれまでですが、僕が言う非日常は、その見た目から連想されるものです。つまり、紅芋タルトの色。これは言わずもがな色鮮やかな紫色です。紫色は色彩心理学上でいくと、繊細、不思議、エキゾチックといったイメージを連想させます。

 

これが何を意味するかというと、非日常たる南の楽園、沖縄という環境的要因と相まって紫色が放つ、非日常感が消費者の購買意欲を刺激することに一役買っているということです。これは先のギャップと相反する要素です。つまり、非日常感を連想する色と非日常たる沖縄、この因果関係がある種隠喩的に結びつくことで、消費者を沖縄旅行の余韻や思い出に没入させることができます。

 

つまり、この紫色から伝わる非日常感こそが、お土産購入者の継続した旅行への没入を下支えし、いわば懐古的に楽しむ要素を提供してくれるのです。これまた味が論点ではありません。

 

ギャップも非日常もいずれにおいても味は二の次に置いているのが僕の見解です。それは紅芋タルトの味批判をしているのではなく、冒頭の話題に戻りますが、御菓子御殿とナンポーにおける味の違いが素人見では全く分からないのと同様に、もはや紅芋タルトが美味しいか否かなど、消費者の購買意向には無関係だということです。

 

厳しいことを言ってしまえば、訴訟が起きるくらい真似ができてしまうお菓子だということですよね。だとすれば味で勝負など以ての外です。

 

その他にもお土産の基本ですが、分配のし易さ、旅行後に各所へ展開し易いという小袋要素も重要なファクターだといえます。類似するもので言えば、雪塩ちんすこうにおいても、箱の中身は小袋になっており、それぞれ各々のデスクで食べることができ、お土産の定番になっていました。

 

この章のまとめですが、御菓子御殿もナンポーも勝負するところは、どちらの紅芋タルトが元祖か否かでもなければ、どっちの味が優れているのかではないということです。紅芋タルトはあくまで成功事例、ベンチマークとして捉え、先に述べた沖縄ヒットルールである『ギャップと非日常』を追求し、新商品や紅芋タルトのプロモーションのブレークスルーを模索しないといけません。

 

味や新しいものを出せば良いと言う話ではないということです。無論、どっちが元祖なのか等、全く重要ではありません。

 

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目的なきプロモーションの功罪

さて、ようやく冒頭の新CMについての言及です。

 

まず結論から言って、駄作でしょう。

 

理由は一つ、だから何?と言わんばかりに、消費者に与える感情の変化が無いからです。強いていうなれば、子供が好きそうかな。くらいですね。

 

同じトーン&マナーの、こちらCMとは話が別です。もしこれを意識したのであれば、課題設定やそれに対する打ち手や当該施策の目的にズレがあるのではないでしょうか。

 

 

ホンダカーズ沖縄の展開する「まるまるセット」のTVCMも同じく、子供が好み、大人も耳に残り思わず口ずさんでしまうようなキャッチ―なクリエイティブです。恐らく、それまで認知されていなかった「まるまるセット」という商材を広く認知させ、併せて商材の内容理解を促進することを目的に、テンプラキッズのキレのあるダンスとポップな世界観、耳に残るBGMでアテンションをとり、上記目的に即したプロモーションに成功しました。

 

しかし、紅芋タルトはどうでしょうか。もう沖縄どころか全国民が知っています。

 

さらにこれ見よがしに『元祖』を謳っていますね・・・。大方、改めて沖縄県民や県外の人間に新しい御菓子御殿のイメージや親しみやすさを伝えるべく制作されたコーポ―レートCMに限りなく近い商品CMでしょう。また、DJみそしるとMCごはんというこれまた東京で活躍するアテンションになるタレントを起用した展開です。うーん二番煎じ感がすごいですね。

 

ということで、御菓子御殿やこれを制作した広告会社に問いたいのが、このクリエイティブが意味するもの、ブランドイメージを変えたいのか、ただ話題を呼びたいのか(ま、そこまで話題にならないクリエイティブかと)、目的をはっきりさせるべきだということです。そして目的やメッセージが曖昧なために、どこにも刺さらないものになってしまっているのではないでしょうか。

 

このCMの評価できるところは、映像が“今風”くらいではないでしょうか。沖縄県民にとってかけがえのない存在たる紅芋タルトに改めて親近感を持ってもらうのが目的であれば、正直今までの曲の方がよかったと思います。例えば、沖縄食糧のフィラーCM(天気予報)。これは誰もが口ずさめる歌で、映像や曲調は決して新しくはありませんが、まさに県民のアイデンティティそのものです。

 

目的を明確にする、生活者の認識や態度をどう変えたいのか、どう捉えて欲しいのか、しっかり考えた方がいいでしょう。このCMを観て感情が動くのは、読谷村民くらいではないでしょうかね。インバウンド施策ではよくある話です。地元の人間が好むものを観光客は好む、この方程式を忠実に守るのであれば読谷村民が喜ぶのは本望でしょう。しかし、沖縄県民も飽きてるんですよ、紅芋タルトに。どうぞご理解ください。

 

今紅芋タルトに必要なのは、地元民と一緒にオナニーをするのではなく、いかにして腐敗した定番感を払拭し、改めて観光客が来沖時に消費したくなる、拡散したくなる、そういった目的意識が最重要ではないでしょうか。

 

これが目的なきプロモーションの功罪です。

 

結果、食わなくなる

以上のようにツラツラと紅芋タルトを取り上げ、そのプロモーションコンセプトや論点のズレについて指摘してきましたが、僕は妻と出会い、沖縄に通っていた折に、お土産として購入していた紅芋タルトの味や配布した時の当時の会社の同僚や家族の笑顔を鮮明に覚えています。

 

そして、やっぱり紅芋タルトを買ってよかった、と思っていました。

 

これまでもこれからも、沖縄を代表する、選ばれ続けるお土産であって欲しい、それが僕の真意です。

 

しかし、沖縄に住むようになってもうほとんど食べなくなりました。なぜならば、それはギャップもなければ非日常でもないから。正に観光先から住んでいる場所へと僕にとっての沖縄が変わったからというのが一番の要因かと思いますが、それだけではありません。

 

これは先に述べたこととの矛盾にもなりますが、正に県民にも選ばれなくなった最たる証拠だと言えます。

 

それでは、また。