勾留延長の精神的インパクト

勾留延長の精神的インパクト

 

どうもこんにちわ、INAZOOです。

 

日産のカルロス・ゴーン氏の逮捕劇から勾留期間の延長などで世間は湧いています。

 

皆さん、『勾留延長』という言葉にどのくらいのインパクトがあるか、なかなか想像ができないのではないでしょうか?

 

 

20番
まぁ、

想像する必要ないわな;

 

 

ゴーン氏の勾留延長に関する一連の寸劇を見ていると、検察側の思惑も然りですが、渦中のゴーン氏が拘置所でどういった心境なのか、またどれだけ屈辱的な待遇を受けているのか、といった点に経験者の僕の関心は向きます。そのため、今回は、より生々しい感情や状況を読者の方にイメージし易いように自身の経験をなぞらえながら論じていきます。

 

結論から言うと、また、実際に経験した身から言わせてもらえば、勾留延長という処遇は、深くて暗い穴藏に射した一筋の光が、瞬間に断たれるような、あるいは、地上に辿り着く唯一の手段たる蜘蛛の糸が切れてしまうような、そんな絶望にも似た感情にさせるものです。

 

そして、今回のゴーン氏の勾留延長で特筆すべき点は次の2点です。

 

① 留置所ではなく、拘置所での勾留

② 裁判所による勾留延長の棄却

(※後に特別背任容疑で再逮捕のため勾留延長)

 

ちなみに、先に僕の経験上の話と申し上げましたが…あくまで経験したのは警察署内にある留置所であり、拘置所ではありません。しかし、留置所内で聞いた話を含めて考えるに、拘置所での勾留延長は、留置所でのそれをはるかに凌駕する程の絶望的な気持ちになりうるということです。

 

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勾留の基礎知識

まずは前提知識を纏めます。基礎知識のある方は割愛いただき、次項より読み進めてください。

 

勾留とは

勾留(こうりゅう)は、逮捕された被疑者もしくは被告人を刑事施設に留置して拘束することで、その目的は主に、『逃亡や証拠隠蔽を防ぐため』に行います。そしてこの勾留期間の中で、警察による取り調べや、検察による取り調べ等を行います。以下に、これらの期間についても簡単に触れておきます。

 

勾留期間

まず、逮捕をされてから72時間という壁があります。つまり丸3日間ですね。内訳で言うと、逮捕後の48時間以内に警察から検察へ身柄が移され、次の24時間以内に検察が被疑者を勾留するか否かを決めることになります。この72時間を終えた段階で、先述した勾留目的上必要と判断された場合に、検察より裁判所向けに勾留請求がなされることになります。そして後ほど詳しく話をしますが、先ずもってこの勾留請求はほぼ100%の確立で勾留決定となります。

 

ちなみに、ここまでの72時間に関しては、弁護士以外の接見は禁止されています。つまり、家族等も勾留が決定した後でないと会うことができません。正直初めて逮捕される場合などは、この72時間が一番きつかったです。

 

勾留が決定した後に、まずは最初の10日間が待っています。この10日が経過するまでに検察も起訴か不起訴かを決めないといけません。また必要に応じて更に10日間の勾留延長がされる場合があり、最大で都合20日間の勾留期限があります。

 

つまり、都合最大20日間の内に、検察官は起訴するのか不起訴とするのかを決めないといけないということです。勿論エビデンスを元に。ゴーン氏の件で言うと、この勾留期間が経過する直前に別件で再逮捕をすることで、勾留を合法的に伸ばすという手法が取られています。とまぁ刑事事件ではよくある手法で特段検察がせこいとかそういうわけでもないようです。

 

話を戻すと、この勾留期間たる20日間が経過し、不起訴になれば釈放ですが、起訴になると裁判の日まで(略式裁判を除く)引き続き勾留されることになります。この起訴後の勾留期間は原則2カ月ごととなっており、判決が下るまでは1カ月単位で更新がされることになります。

 

保釈とは

勾留期間で記述した、『起訴』が確定した時点で、保釈金を払って保釈されることが可能です。これは、最初の判決が言い渡されるまでの間、身柄を開放されることであり、釈放という意味合ではありません(勿論、外には出られます)。保釈金の相場は人により異なるので被告人の年収当に比例して決定します。この辺は弁護士に相談すれば相場感は教えてくれます。

 

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留置所での生活

最初の72時間と、その後の最大20日間、起訴後は保釈なしであれば2カ月以上、これだけの期間を過ごす留置所の生活について簡単に触れます。表題たる「勾留延長の精神的インパクト」を語り、イメージをしてもらうには、何を差し置いてもこの留置所での生活について言及することは避けられません。

 

ちなみに、私は72時間+10日間の計13日間を留置所で生活しました。たったの2週間とも採れますし、2週間もとも採れる期間です。しかしこれは、当事者にとって控え目に言っても途方もなく長く、暗闇のような生活です。まぁ犯罪者という点で言えば当然ですが、僕の様な有罪確定者なら露知らず、勾留は被疑者(起訴前の人)もいますので、下手をすれば無罪の人もこのような生活を送ることにもなってしまいます。ゴーン氏は2018年11月19日に逮捕されているので、もう既に現在(12月27日)まで37日勾留されており、もはや私の想像を凌駕していますが、恐らく、勾留期限が近づくと僅かな望みを抱きつつも、延長の決定が下され、その度に天を仰ぎ、家族や外の光を浴びることのできない状況に項垂れていることでしょう。

 

部屋

留置所の施設は基本的に相部屋です。ゴーン氏は異例の拘置所での勾留なため、基本的には独居房であろうと推察されます。ここでは私が経験した相部屋、普通は雑居房なんて言われますが、このタイプについての説明です。

 

部屋の広さが8畳程度で、部屋の隅にトイレがあります。トイレは一応仕切りがあるタイプですが、外から上半身は見えるタイプであり、同居人が用を足しているときは暗黙のルールでそちらを見ないような雰囲気があります。この辺は少し日本社会のいい面ですかね;いや、そんなところは見たくもないのでしょうが・・・。

 

また、ロール式ではなく、1枚1枚のトイレットペーパーが積まれています。ペーパーがなくなった時やなくなりそうな時は、格子越に『担当さん ※後述』に補充の依頼をすれば支給されるというイメージです。

 

言わずもがなですが、部屋にはテレビもなければベッドもありません。畳オンリーです。そして勾留者は裸足が原則ですので、冬はかなり寒いです。私も沖縄とはいえ1月末~2月頭でしたので相当寒かったですね。

 

食事

食事は三食出ます。朝8:00、昼12:00、夜18:00に食事をします。以下は私のいた留置所での話ですので、必ずしも全てに該当するわけではありませんが、参考までにご覧ください。朝はパン(菓子パン)とバナナと飲み物(ヨーゴ、コーヒー牛乳、牛乳より選択)、昼と夜は日替わりでご飯とおかずと汁物、温かいお茶といったバリエーションになります。

 

まずもって最初の72時間と数日はご飯は喉に通りません。逮捕されている現実による意気消沈、反省、家族を失うのではという不安、その他様々な思いが錯綜し、当然のように食欲がなくなります、その中でも唯一の救いは朝食のパンと飲み物でした。私も最初の1週間を過ぎたくらいからようやく昼食・夕飯を口にすることはできましたが、常に残している状況には変わり在りませんでした。

 

俗に言う臭い飯という感じではありませんが、当然気持ちとしても美味しいものではありません。また、取り調べ等で不在の時はご飯だけが居室に置かれる状況なので冷えていることも多々あり、もう悲しすぎる状況でした。尚、これでも留置所での食事環境は改善された方のようで、というのも先述した通り勾留者は未決なので、無罪の場合も当然あります。そのため犯罪者でもない一般の人に出す食事として適切なものを提供しないといけませんよね。そういった配慮から食事事情が改善されたようです。

 

ちなみに、留置所での食事の様子を詳しく書いた記事はコチラです。少し明るい気持ちになりたければどうぞ ↓

 

沖縄乳酸菌界のホープ、ヨーゴ。

 

就寝

就寝は21時です。そして先程記述した畳の部屋に毛布を敷き寝ることになります。ちなみに留置所の場合、布団があるのではなく、毛布を一人3枚、枕(堅い4角柱のモノ)を使用することができ、それを使って寝ます。使い方は人それぞれですが、基本的には1枚を下に敷き、1枚を身体に掛け、最後の一枚を枕にする人もいれば、寒いので毛布2枚を身体に掛けて寝る、というスタイルの人もいます。

 

私が勾留されていた時期はとても寒かったので、最後の1枚は足元を強化するのに使用していました。本当に夜の足元が寒かったのです。

 

また、寝る場所についても8畳程度の部屋のスペースを勾留者が各々に分け合うというイメ―ジです。私のいた部屋は運が良かったのか、最大3名になった同居人全てが特に広い場所を占有するわけでもなく、暗黙の位置取りをしていた感じでした。まぁ、無用な争いを避けるわけですね。

 

時間

留置所での1日のタイムスケジュールは次の通りです。

 

 

7 : 00 起床、居室の掃除、洗面

8 : 00 朝食

9 : 00 運動 or 髭剃り(週2回程度)

12:00   昼食

18:00   夕飯、洗面

21:00 就寝

 

 

これが基本の流れです。尚、この間に週2回入浴(シャワー)の時間があり、体を流すことができます。また、毎朝食事が終わって少しすると図書の貸出しがあり、最大3冊まで借りることができます。

 

また、各項目の間が非常に長く感じるスケジュールですが、その間に警察や検察の取り調べ、実況見分などを行うわけです。このような用事?があるときは未だしも、ただただ判決や検察の判断を待っている時間、いわゆる『無』の時間が勾留期間中の一番の辛いところです。

 

この時間を凌ぐのは、同室者との会話や瞑想、昼寝、読書、この辺です。

 

とにかく考えることができる時間が多すぎて、瞑想どころか場合によってはひどくマイナス思考になってしまったりもします。この『無』の時間、これを考えると今でもゾッとします。

 

その他

留置所ライフでその他特筆すべき点といえば、弁護士との接見です。

 

むしろ、弁護士を選任し召喚することが勾留期間の生活を180度変えます。

 

これはどういうことかと言うと、留置所内では、外との連絡手段は一切遮断され、後述する担当さんも向こうから何かを教えてくれたり、アクションを起こしてくれることは一切ありません。つまり、これまで述べてきた留置所での生活や勾留期間の仕組み、検察取り調べでどういうことを聞かれるのか、どうやったら釈放されるのか、この辺の情報が一切分かりません。さらに、被害者のいる事件の場合、被害者の方との示談交渉や安否の確認も何一つ自分のみでは行うことができません。この状況が物理的なもの以上に精神的に暗闇に放り込まれるような心境を象徴しています。

 

いわば、全く知らない土地で、しかも冷たくご飯も喉を通らない、いつ出られるか分からない手探りな状況、この暗闇から救ってくれるのが弁護士です。

 

また、身に覚えのない罪で逮捕された場合などは特に、警察の取り調べ等で早期に釈放されたいからと思い虚偽の自白をしてしまうこともあります。いずれにせよ、なるべく早く弁護士を呼んだ方が良いです。

 

私の場合、酒気帯び運転という明らかに自分に過失があるものだったため、当初は弁護士に依頼することは考えませんでした。つまり、私の認識として弁護士とは、無罪だと思う時に、あるいは判決に不服がある際に頼むものと漠然と考えていました。しかし、実際に経験したところこれは大きな間違いでした。

 

控え目に言っても、逮捕されたら、弁護士がいないと何もできないのです。釈放されるまでの時間等が当事者としては一番気になるところですが、先ほど記述した通り、被害者がいる場合は、被害者へのフォローという点で最も重要なのが弁護士です。

 

反省文を書いたところで許されるものでは決してありませんが、被害者や裁判官に対して反省文や再発防止策を作成するなどの対応も含めて全て丁寧に教えてくれます。

 

では、どうやって呼ぶのか?それに関しては『担当さん』を読んで弁護士に相談したいと申し出ます。先ほど、担当者さんは何も向こうからは教えてくれないと述べましたが、これはあくまで自発的にという意味で、こちらが持っている権利(弁護士に相談する権利)を行使する時にはしっかり手続きをとってくれます。

 

少し長くなりましたが、弁護士への相談、これは必須だと考えた方が良いです。

 

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「担当さん」の管理

さて、ここまでの説明で幾度となく出てきているのが、『担当さん』です。

 

僕も最初は何て読んだらいいのか分からず、普通に「すみません」と呼んでいましたが、他の房から聴こえる声から予想し、

 

 

「タントウサーン」

 

 

と聞き取ることができました。結構これは初勾留者あるあるかもしれませんが、最初は本当に分かりません。徐々にこの人達が担当さんと呼ばれていることに気づく感じです。まぁまず違うでしょうが、もしかしたらあのゴーン氏も片言な日本語で「タントウサーン」と呼んでるかもしれませんね。

 

担当さんは、正式には留置担当官と言い、警察組織の人間です。そしてややこしいのですが、留置所の場合は警察の管轄なので担当さんですが、拘置所の場合は法務省の管轄なので、いわゆる看守と呼ばれる存在に変わります。

 

担当さんは警察組織の人間とはいえ、取り調べをする刑事とは異なりますので、どちらかというと被疑者たる勾留者の味方のような雰囲気もあります(勿論、ニュートラルな立場です)。そのため、部屋にあるトイレットペーパーが無くなった時の補充依頼や、備品購入依頼(便箋や封筒)なども担当さんを通して行います。

 

他の留置所ではどうなのかは不明ですが、やはりしっかり指導がされているのか、我々勾留者の人権を尊重した紳士な態度を執ってくれる印象が強いです。担当さんとは検察取り調べや裁判所に行く際にも移送者で会話をすることもあったので、ほんの少し気持ちの許せるフラットな人たちといったニュアンスですね。

 

しかし、担当さんの認識が物語っていた少し疑問に残る特徴的なこととしては、勾留延長の常態化です。

 

これは、最初の72時間が終わった時点で、絶対的に勾留請求がされるという考えが担当さんレベルでも蔓延しています。これはどういうことかというと、被疑者は早く外に出たいが故にあわよくば72時間で釈放される思いでいるかもしれませんが、担当さんに至っては当然のように勾留が成されることをもはや悟っています。

 

具体的には、72時間が終了した時点で、少なくとも10日間という長期の滞在が決定しますので、洗面用具を購入するかどうかを聞かれるのが通例です。そしてこの購入判断を問うのが、72時間よりも前なのです。これがどういうことかというと、間違いなく72時間後も勾留10日間があるから洗面用具を買うだろ?と言わんばかりの手続きだということです。つまり、引っ切り無しに留置所に入ってくる人間がいる中で悠長に勾留決定した後に洗面用具購入の手続きをしていたのでは事務的にも回らない、そんな業務の効率化のような一面が垣間見えました。

 

少なくとも勾留決定がされるかどうかは、どちらとも言えない、ではなく、「いつもそうだから」というみなし認識が起きるのは、逮捕事件の有罪率や勾留決定の常態化が生んでいる惰性とも言えるのではないでしょうか。

 

必然にせよ、望まぬ結果にせよ、勾留延長はとても精神的にも肉体的にもインパクトのある決定です。ゴーン氏の思いは本人のみが知るところですが、一般の人であれば、地に落とされたような、暗闇に放り投げられるような気持ちのする処遇です。重複しますが、少しでも道しるべを作るためにも早期に弁護士に相談することをお勧めします。

 

それでは、また。