産業医はモンスターだった

どうもこんにちわ、結局、まじめなブロガーのINAZOOです~。
ふと、ふと思い出したわけです。
東京で働いていた時に出会ったモンスターを。
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僕は、とあるSIerで営業職を3年程していました。その会社は連結で2,000名以上の社員がいて、曲りなりにも一部上場企業だったので、産業医が常駐する「健康推進室」という部署が本社に一室を構えていました。
常時50人以上の事業場は、
業種問わず、
産業医の選任義務がある。
常時1,000人以上の労働者がいれば、“専属”、
つまり、常駐しないといけない。
今日は、そこにいたおばさん産業医、いやモンスターの話です。
健康推進室の門が叩かれるまで
僕が産業医の常駐する健康推進室の門を叩いた理由は、会社に行くのがめっちゃきつくなかったからです。
具体的には、平日の朝起きれなくなったり、遅刻しがちになってました。厳密に言うと、起きられないというより、「起きたくない」という感情に近かったですね。
目覚ましが鳴って、出勤する方向に気持ちが全く向かず、あと10分とか15分という少しだけ時間の余裕があると、現実逃避の如く二度寝をしていました。そして再度目が覚めると、就業開始数分前、という状況・・・。
ここで、必殺ショートメールでの遅刻宣言。
to 支店allのML(メーリングリスト)に同内容のメールを送り、そのまま眠りにつきます・・・。
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そんなことを何も気にせずに、常習的にやってのけるほどメンタルが図太いわけでもなく、少しづつ、会社のメンバーや上司に申し訳なさや後ろめたさを感じながら、たまたま起きられた時には時間通りに出勤する、これを繰り返していました。
何も気にせずにやってのける、これが一番重要で、このくらい図太ければメンタルを壊さないわけです。メンタルを壊す僕のような人間の特徴は、この状況(遅刻しがち、起きれない毎日)を少しずつ申し訳なく、後ろめたく感じ続けて、毎日少しずつ自尊心が摩耗していってしまうところなのです。
しかし、今考えるととても不思議だったのが、朝一にアポイントが入っている場合、つまり約束がある場合は自然と起きて会社に行けていました。
つまり、多少なりとも相手がいて、日常の小さな責任が伴っていると体が動いたんですよね。自分が行かないと案件が進まない理由だったり、一定の裁量や代りの効かない状況が、自分のメンタルを留めていたような気がします。
なので、僕の場合、仕事が忙しすぎて現実逃避、というよりは、ある程度慣れてきたり、目標達成などが見えてきた段階で起きる、極端な「飽き」が原因でした。
仕事を覚えたり、数字を達成したいという思いに燃えている内は、まったくそういう気が起きませんでしたが、慣れてきたり、ある程度実績を残してくると、途端に燃え尽きるようにモチベーションが下がる。
例えるならば、ハマっていたRPGで、レベル上げやボスを倒すときは楽しかったし、敵と戦い続けることに飽きはなかったけど、一定レベルに達したり、そのゲーム内でボスを倒すパターンなどを習得してくると途端に、つまらなくなり、ゲーム自体をやらなくなる感覚に近いです。
こういう流れで、メンタルを壊していったと改めて捉えることができるのですが、まぁとにかく、めんどくさかったんですよね。そこまで喫緊な課題や問題がなく、毎日繰り返し同じようなことをして、同じような案件処理をする。これに死ぬ程飽きてしまった・・・という感じです。
ぶん殴りたい話やな。
冷静に考えるとぶっ飛ばしてやりたいくらい雑な理由なんですが、当時もそのくらい自分勝手に、周りを気にしないくらい自由奔放な発想であれば、健康推進室のお世話になることもなかったということです。
自分が会社に行かなかったり、遅刻をするくらいでは、誰も死ぬ程困るものではない、それくらい冗長化されているのが組織の妙であり、会社員のメリットですよね。
現れたモンスター、産業医
こんな感じで会社に行けなくなり、申し訳なくなったり、現実逃避していく内に、くっそつまらない自尊心からか、毎朝会社に連絡するのすら辛く(いや、逃げていたのだろう・・・)なり、無断欠勤をするようになってしまいます。
毎日連絡をくれる上司を無視し、家でダラダラする毎日。上司の電話やインターフォンが鳴ることに対し、出ていけない自分の情けなさや、上司への恐縮を繰り返し、これを2週間くらい続けました。終いには、実家の両親や友人にまでも連絡が行き、籠城が解かれ、今後について上司と話し合うことになりました。
結論から言うと、休職という選択を執ります。そして休職する上で、まず、会社専属の産業医との面談が会社では義務付けられていました。
こうなると、結構僕自身も精神的に疲弊していて、自尊心が崩壊し、本当にうつむきながら面談に挑んだのを覚えています。
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とはいえ、「産業医」と呼ばれる、いわば医師の資格を有した人間、変な期待はしないにせよ、会社の上司やメンバーとは違って、仕事抜きに健康的な側面から優しくアプローチしてくれる存在?なのかと思っていました。
しかも、常駐の産業医であるため、僕のような場合でなくても自由に相談したりできる対象です。おそらく、心の非武装地帯・オアシスの如く、心癒される場所だという勝手な幻想を抱いていました。
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これ、速攻で崩壊します。
まずはテレビ会議での対面でした。僕は支店勤務でしたので、テレビ会議越しで、産業医のF川氏とのファーストコンタクトを果たしました。
以下、僕が記憶している限りのF川氏のスペックである。
名前 : F川氏
性別 : 女性
年齢 : 50歳代
※社員番号がだいぶ若かったので、創業期からなのか・・・
外見 : ふくよかな印象で、黒縁メガネをかけたおばさん。
その他: 往年の大竹のぶ代さんのような声だった。優しく問いかけるような印象と少し感情的な物言いをする二面性がある。
さて、早速面談内容について紹介します。
最初は、産業医らしく仕事の状況や欠勤していた理由を聞こうとしている様子でした。しきりに僕の事情説明に対して「うん、うん、うん」と頷いて、時折「○○○ということだよね?」といった確認を挟んでいました。
まずこの時点で、僕はこういう人を受け付けられませんwww
というのも、初対面で勿論どう見ても僕の方が年下ですが、産業医とはいえ、保健室の先生ではないのだから、仮にも会社員同士の会話なのだから、「ええ」あるいは「はい」といった相槌をして欲しかったというのが正直な感想です。
これがいかに受付難い雰囲気なのかというと、冒頭の事情説明時から伝わってくる「見下し感」が、自尊心の崩壊したうつ社員にはとてつもなく辛いものだったのです。勿論、こういった場合、親身に聞いてくれる対象として社員に認識してもらうために、フランクな応対を心がけようとしたのかもしれませんが、この辺の対応も対峙する社員に応じて変えるべきではないでしょうか。
仮にも、精神衛生的な問題で同室に訪れることになったものに対しては、事前にどういった性格の社員なのか等、上長などに確認をすべきであったのではないかと思うわけです。
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といった感じで、一通り会社に行けなくなった理由やそれまでの状況について説明していたわけですが、この相槌も然ることながら、しきりに聞いてくる「なぜ、会社に行きたくなくなるのか」といった趣旨の問いについて、すごく違和感がありました。
というのも、僕のケースで言うと、今でこそ先述した通り、一種の飽きのような感情から端を発したうつと分析できますが、その当時は、遅刻や休んでいる状況自体に、とてつもない後ろめたさを感じていて、さらに、その遅刻や休みにおける妥当性の欠如、非論理性のようなものにひどく失望しているのに、「なぜ、会社にこれない?」としきりに聞く事自体、普通の上司や事業主と変わりないアプローチであり、三度上長に経緯を説明している錯覚に陥る程でした。
産業医、つまり医学や労働者のメンタルについて一定の知見を有しているにもかかわらず、事情を説明している側としては、それまでに上司に説明してきたのと同様の感情を抱かせざるを得なかったということです。※ちなみに、このテレカンでの面談には上司も同席していました。
そもそも、こうった面談の場合、上司同席は言語道断であり、管理者をはじめ職場の人間を排除した段階で事を進めないといけないと思えるのは僕だけでしょうか。
こんな感じでどんどんうつむいていく僕に対して、F川氏はさらにモンスターっぷりを発揮します。
事情説明を聞くのも程々に、かなり強い口調でしかも結構な形相で、終いにはこう言い放ちました。
「無断欠勤は、本来クビになってもしようがないことよ!?」
「社会人として、いい大人として連絡するのは当然でしょ?」
「最後に聞きます、あなたは、引き続き○○○で働きたいの?」
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はい、その通りです。勿論分かってますとも。分かっているが故に、自分の衝動的な逃避行動や惰性にひどく後悔し、それでもなお続けてしまっている、そういった自己否定が正に、会社に出られない + 連絡することから逃げる、という状況を生んでいるのです。
分かりきっているが故に、この手の質問がとても辛かったです。なんで、そんなこと聞くの?といわんばかりに。
恐らく、僕のような精神状態になってしまう人は、皆、「社会人として」「大人として」という謎の「~として」の定義からちょっとずつ逸脱していってしまう自分にひどく失望し、心を病んでいっていると思います。
そのため、こういった質問やアプローチをして状況が好転するとは到底思えません。
どちらかというと、「~として」といった議論をするのは、事業者側の話です。
産業医は、労働者と事業者の間に介在するパワー構造からは独立した、労働安全衛生に関わるポジションにある人間であるはずです。そのため、事業者目線を排除し、常に労働者の安全と健康の確保、快適な職場環境の形成と促進に寄与することに尽力しないといけません。
つまり、F川氏は、産業医というポジション、年間どの程度の症例や実際の面談機会に恵まれているかは知りませんが、常駐産業医という、とてつもなくぬるい環境を、事業主に与えられ、社員番号が若い時代から在籍することですっかり事業者目線に成り下がってしまった、と言わざるを得えないわけです。
モンスターという表現は適格ではないかもしれません。しかし、産業医たる意義を逸脱し、事業者目線の領域に介入し、浸りきり、心を病んだ労働者に対して、“あるべき論”や「会社にいたいのかどうか」、つまり労働契約に係るテリトリーにまで介入してくる節操のなさは、まさにモンスター級だといえます。
産業医の職務について
さて、僕が遭遇した事業者マインドの権化と化した、モンスター産業医、F川氏の紹介をしましたが、一般的に産業医たる人間が、どういった職務を担うのかについて、事業場に産業医を選任することを義務付けている法律、労働安全衛生法より規定部分を抜粋します。
労働者の健康管理等
総じて一般的な医師の業務は入らず、医学に関する専門的知識を必要とする次のような職務を担うことになります。
(労働安全衛生法 法13条1項、則14条1項)
◆健康診断の実施、およびその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
◆長時間労働者等への面接指導等の実施及びこれらの結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
◆心理的な負担の程度を把握するための検査、面接指導、およびその結果に基づく労働者の健康を保持するための措置に関すること。
◆ 作業環境の維持管理に関すること。
◆ 作業の管理に関すること。
◆ 上記のほか、労働者の健康管理に関すること。
◆ 健康教育、健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るための措置に関すること。
◆ 衛生教育に関すること。
◆ 労働者の健康障害の原因の調査および再発防止のための措置に関すること。
勧告・指導・助言等
言わずもがなですが、「勧告」とはこういう風にした方が良いよ?っていうニュアンスのものです。具体的なものを見ていきましょう。
但し、よくよく見てみると、ものごっつ抽象的な内容なので、いわゆる訓示的規定というやつですね。産業医にこの辺の職務を守らなかった場合の罰則などはありません。
(労働安全衛生法 法13条3項~6項、則14条3項)
◆「産業医は、労働者の健康管理等を行うのに必要な医学に関する知識に基づいて、誠実にその職務を行わなければならない。」
◆「産業医を選任した事業者は、産業医に対し、厚生労働省令で定めるところにより、労働者の労働時間に関する情報その他の産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報として厚生労働省令で定めるものを提供しなければならない。」
◆「産業医は、労働者の健康を確保するために必要があると認めるときは、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることができる。この場合において、事業者は、当該勧告を尊重しなければならない。」
◆「事業者は、上記の勧告を受けたときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該勧告の内容その他の厚生労働省令で定める事項を衛生委員会又は安全衛生委員会に報告しなければならない。」
◆「産業医は、労働者の健康管理等について、総括安全衛生管理者に対して勧告し、又は衛生管理者に対して指導し、若しくは助言することができる。」
この総括安全衛生管理者というのは、屋外産業や製造業、商業以外であれば常時1,000人以上の労働者がいる場合に選任義務が生じる、いわば事業場の安全管理や衛生管理を総括する人を指します。
定期巡視
前職の職場については、「健康推進室」という産業医常駐の部屋がありましたが、産業医は定期巡視義務というものがあります。要するに、ちゃんと定期的に作業場(職場)をチェックして、作業方法や衛生状態などのチェックをするわけです。
この時まで見たことがなかった。
つまり、巡視してたかは不明www
頻度としては、少なくとも毎月1回(事業者の同意がある場合は、2月に1回)すれば事足りるようです。
産業医の機能不全
おそらく、全ての産業医の方がF川氏のようなわけではないと思います。
しかし、事業者によって選任されるというポジションである以上、産業医の職務に対するモチベーションや姿勢は、あくまで事業者によって塗り固められるのがごく自然な力学だと思うのは僕だけでしょうか。
特に専属となると、それは紛れもなく社員です。
産業医が常駐しているという福利厚生は、表向きは非常に良いものです。いつでも、精神衛生面などのケアが可能な医学に精通した人間がいるということは建前では素晴らしいものです。
しかし、僕が遭遇したモンスター、F川氏のような産業医においては、「この会社にいたいのか??」といったニュアンスの発言をしてしまうくらい事業者色に染まってしまっています。これは常駐という使用関係から生まれる歪みだと思います。
条文で謳われている要素、事の性質上、産業医はフラットな立場で、むしろ労働者よりの視点が必要だと思われます。そのため、どちらかというと専属ではなく、他の事業場における産業医を兼務しているような、偏りのない労働事情への解釈と、幅広くその筋に精通している人材こそ、このポストに就くべきではないでしょうか。
経営者の方がこの記事を見ていた場合は、大切な社員を失わないためにも、精神衛生上のセーフティーネットとして、適切に産業医を選択し選任することを検討いただければと思います。
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とまぁ、今となったらF川氏、元気してるかな。
それでは、また。
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