介護職というキャリアの将来性に投資せよ
- 2019.05.21
- 社会

どうもこんにちわ、INAZOOです。
私の妻は介護福祉士として日夜介護の仕事に従事しています。特筆すべき点は、彼女は中学生の時から介護職に従事することを夢見て、その夢を実現させたということ。
つまり、自分の身近な人や高齢者の方をサポートすることを能動的に捉え、その仕事に使命感を持ち従事しているということです。
しかし、2019年現在、介護職は圧倒的人材不足と待遇面の低さという問題を背景に決して夢を持てる職業とは言い難い状況です。つまり、妻のようにやりがいや希望を持って率先して介護職に従事する人は非常に稀だということ。
妻のように夢を持って介護の現場に入ってきたものの、その過酷な現場により精神や身体を病み、結局離脱してしまうケースの方が現状は非常に多いのが実情です。
しかし、確実にこの状況は今後10年程度で大きく変動することが予想されます。
つまり、社会から必要とされ、待遇面でも圧倒的に優位になるポテンシャルを秘めているのが介護職だということです。
華やかに着飾り、日夜Instagramでランチやディナー、ネイルを晒しているOL、丸の内や六本木辺りでうつつを抜かしているこういうバカ女共は刮目しなされ。
今後、介護職が求められる決定的根拠
ご存知でしょうか、2025年問題という言葉を。
社会保障制度の世界では、東京オリンピック以上に乗り切らないといけないもの、それが2025年問題です。
端的に説明すると、団塊の世代が2025年頃までに後期高齢者(75歳以上)に達する事に伴い、介護・医療費などの社会保障費の急増が懸念されているというものです。
2012年8月 | 2015年 | 2025年 | 2055年 | |
65歳以上の高齢者人口(割合) | 3,058万人 (24.0%) | 3,395万人 (26.8%) | 3,657万人 (30.3%) | 3,626万人 (39.4%) |
75歳以上の高齢者人口(割合) | 1,511万人 (11.8%) | 1,646万人 (13.0%) | 2,179万人 (18.1%) | 2,401万人 (26.1%) |
上記表を見ていただいても分かるように、2025年においては、65歳以上たる前期高齢者と75歳以上たる後期高齢者を合算すると、人口の約48%までも占めてしまうのです。
これは、普段からこの分野に関心がなくとも衝撃的な数字だということがお分かりでしょう。人口の約半分が高齢者ということです。介護領域で言えば、介護保険の第一号被保険者に該当する方々です。つまり、介護サービスを一般的に受ける層にあたる方々です。
これまでの構図で言うと、65歳以上の方が1人に対して20歳~64歳の人間は約2.4人という比率でした。つまり、一人の高齢者に対しての支え手は少なくとも2人、ないし3人といった構図でした。
しかし、先のデータで見たように、2025年以降は65歳以上の方1人に対して20歳~64歳の人間は1.2人になる推計ですので、シンプルに誰でも一人の高齢者を支えている、という状況になります。

さらに、出典:厚生労働省「今後の高齢者人口の見通しについて」を参照いただければデータが閲覧できますが、厚労省によると、「認知症高齢者の日常生活自立度」Ⅱ以上の高齢者と、世帯主が65歳以上の単独世帯や夫婦のみの世帯が年々増加しているということです。
つまり、圧倒的に今後も介護需要が高まっていくことが予想されており、これは紛れもなく事実だということです。
AIやシステムで代替不可な領域、介護

ビジネスの世界では従来の事務処理等の人間が行っていた作業を代替するものとして、AIやRPAが注目されています。
また、AIのカバー領域は単純作業に留まらず、様々なデータやこれまでのパターンに応じて機械学習を行い、複雑な計算やあらゆる事象の予測といった、様々な創造的な業務も可能だと言われております。
では、先述した圧倒的介護需要に対して、こういったテクノロジーは有効なのか。そういった疑問が湧きます。
勿論、大いに有効だと思います。
しかし、あくまでAIをはじめとしたテクノロジーが有効なのは、生産性や介護業務の合理化という点においてです。
つまり、先の事務作業のように職種自体の代替が可能なわけではないということです。
AIが介護業界に浸透することで、様々な利用者のデータが蓄積され、ケアプランや日々の対応フローについても一定のフレームワークが生成され、各段に業務は効率化されていきます。
さらに、利用者の体調や性格特徴、設備や備品の状況等もシステムで可視化し、AIを活用することでこれまで必要とされていた急な業務や備品交換等のイレギュラーな対応も先読みすることができ、介護施設自体を常に衛生かつ快適なものに維持してくれるでしょう。
しかし、介護職というのは果たして、高齢者の身の回りの世話をすることだけがその存在意義なのでしょうか。
利用者にとって、介護施設に入所することで得られるメリットはそれだけではありません。
人のケアという代替不可能なスキルとマインド
先述した通り、AIをはじめとしたテクノロジーの進歩は、介護業務の合理化や生産性の向上に大いに貢献することでしょう。
しかし、こと介護に関して言えば、単純に業務が効率化されたり、将又ロボットの力で力仕事を極力軽減できるかもしれませんが、そういった物理的な作業のみがこの仕事の価値ではありません。
それは、人間の温かみという観点を抜きにしては語れないことでしょう。
利用者の中には、ご家族やパートナーと死別したり、ほとんど交流を持たなくなってしまった方もいるでしょう。また、若かりし頃の威厳やキャリア、誇りやプライドを抱えながらも、自分の老いと向き合っている方もいるでしょう。
様々な背景はあれど、いわばゴールの見えない生活を送っている高齢者に対して、最も必要なのが心のケアだということです。
そしてこういった心のケアは、決して機械やテクノロジーで代替できるものではありません。目と目を合わせて血の通った人間と会話をし、笑い、怒り、触れることで初めて実感するもの。こういった繋がりこそが生き甲斐であり、心に充足を与えるものです。
そして、こういった心のケアのできる接し方というのが、先述した私の妻のような、能動的で高齢者をサポートしたいという思いになります。
これはある種属人的な要素・素養であり、重複しますがテクノロジーでどうこうできるものではありません。
また、これまでとりあえず電卓を叩いて、受注処理をしていればよかったOLの類(仕事を事務としか捉えない輩)ができるものではありません。
OLは全員不要、今すぐテンキーから手を放せ

ということで、2019年時点で、丸の内だか六本木だかで香水の匂いをまき散らしながら、のうのうとテンキーを叩いているバカがいれば、忠告しておきたい。
あなたは間もなく、全てを失います。その指に光るネイルや昨日食べたイタリアンやフレンチ、将又先日の合コンで依り好みしたリーマン等々・・・
これまでたまたま顔が良かったり、多少学歴が良かったがために享受していた、OLという職種で得られたメリットは音もなく崩れることでしょう。
つまり、あなたたちは要らないのです。自分で考え、誰かを献身的に思い、サポートしようとする体温を持った人でなければ、市場原理によってあなた方の価値は地に落ち、たちまち職を失うことでしょう。
OLのOは、落ち武者のO・・・と言われることも近いでしょうね。
介護職の人間を蔑み、「あの子は大変よね」「給料安いのによくできるわ・・・」と言っていた連中が、近い内に待遇面で圧倒的敗北を期すことになるのです。滑稽ですね。
悪いことは言いません。これからもOLをやりたいのであれば、テクノロジーの採用に疎い地方の零細企業に入社してください。そこならしばらく職を失いません。たぶん。
介護従事者を増やすための課題
では、OLより圧倒的に市場からの需要が増えることで、価値が増すであろう介護職ですが、そもそもの従事者を増やすためにはどうしたら良いのでしょうか。
そのためにはいくつかの解決すべき点があります。
労働環境

まずは何といっても労働環境です。
毎年何人もの介護職員がうつ病やストレスで離職しているのが現状です。日に日に増す介護ニーズに対して、圧倒的に人材が不足しており、にもかかわらず賃金が思うように高くならない・・・そのため、一たび雇用してもなかなか人材が定着しないといったスパイラルにあるのが主たる要因でしょう。
では、人材が足りない、あるいは人が辞めてしまう・・・こういった状況をどう打破するのか。
それはまさに介護現場にITの積極導入が必要不可欠だと言えます。
妻の話ですと、介護施設は未だに(中には異なるところもあるようです)申し送り事項やカルテの類がアナログに利用されており、日々の介護業務と並行してこのような事務作業を行わないといけないようです。
しかも、『紙』なのでその手間は非常に大きいものです。かつ、利用者さんの情報もあるからでしょうが、基本的には職場での記入等が徹底されているとのことです。つまり、確実に職場で終わらせないといけない業務だということです。
この辺の本来業務以外の事務作業については、もっと合理化を進めていかないといけません。とはいえ、介護施設は潤沢な資産があるわけではありません。
こういった介護業界の不合理を打破するようなfreeeやsmartHRのような安価で導入ハードルの低いツールの誕生及び普及が不可欠なのです。
従来、電子カルテなどの医療系システムは非常に大がかりなコストのかかる投資でした。今もそうかもしれませんが、これらもfreeeのような会計システム同様にSaaS型(クラウドサービス)で提供されるような、容易に導入できるようなサービスが必要です。
待遇
ZOZOの前澤社長がこんなツイートをしていました。
人がやりたがらない仕事を責任感持って進んでやっているのに低収入だと思う人は、堂々と会社に賃金アップの交渉をしましょう。一人で難しければお仲間を集めて。皆さんのおかげで社会が回っているのですから当然の権利です。
— Yusaku Maezawa (MZ) 前澤友作 (@yousuck2020) May 2, 2019
これに対して、多数のリプが寄せられていましたが、大半が介護職に関するものでした。
介護の仕事元々好きだったけど、
バタバタ休憩もとれないし
利用者さんからの暴力ゃ
暴言等に耐えて辛いのに低収入で、
保険ばかり引かれて
本当に嫌になってます。
会社と言うより社会(政治的な)の問題
もあると思いますが。。(笑)— ⭐️のん太郎☆リプ垢@聖くんのbanana⭐️ (@koki0119bnnINKT) May 2, 2019
それができる社会になってほしいです
介護士ですが
人材不足の介護業界で頑張っているつもりですがやはり割りにあわない感はありますほかにも世の中にはそんな仕事
ごまんとあるはずです— jIn (@Kaz76285919Kaz) May 2, 2019
これくらい介護職を巡る待遇は未だ未だ十分ではないのが実情です。
介護労働者の所定内賃金(月給の者)は平均227,275円(224,848円)であり、賞与は平均572,079円です。※ データ出典元:平成29年度 「介護労働実態調査」
この国の平均所得を約420万円だと捉えると、その差が年額で100万円近くあるということです。年収ベースで100万も低い業界と考えるといかに待遇が悪いかが一目瞭然です。
さらにこれは全国平均ですので、沖縄のようなそもそも最低賃金額が低い地域ですと、上記以下の待遇を肌感で感じている場合がほとんどになります。
妻も夜勤をすれば夜勤手当が出るようですが、依然として給与は私よりも低く、無論私よりも社会貢献をしていることは言うまでもなく、代替不可な仕事なはずです。
これは何としても是正しないといけないものです。
社会的評価
介護職に対する社会的評価は未だにあまりよくはありません。
それは当然のことながら、先述した労働環境や待遇面に起因しています。業務を効率化し、従事者の負担を軽減し、待遇を飛躍的に改善しなくては、介護職の社会的評価の底上げが成されず、無論人材の確保も難しくなってしまいます。
正直、やりがいや社会的意義というのは、経済的な担保が成された上で手放しで掲げることのできるものです。つまり、一定の経済的安定性を担保しない限り、社会的に意義のある仕事だということ自体では人材を採用することは難しいということですね。
また、このような実状に対して、介護報酬頼みの運営では到底追いつきません。
そのため、介護施設運営者も官民問わず収益性や多角的な事業展開を積極的に実施していかないとなかなか潤沢資金力を持てないのが現状です。
介護ベンチャーといった類のもっと新たな技術開発やその他の事業にチャレンジする施設に対して、より多様な補助金制度といったものも今後一層増えていきそうです。
エンジニアと介護職は超売り手に

2025年問題を前に、介護職のニーズが圧倒的に増える、しかし、現状の待遇や社会的評価は低い。この状況、現在圧倒的に市場価値があり、新卒初任給で企業によっては圧倒的に高額を叩き出す「ある職種」と変遷が類似しているように見えます。
それがシステムエンジニアです。
昔はシステムエンジニアも代表的ななりたくない職種の一つでした。いわゆる3K(臭い、汚い、帰れない)と呼ばれる職種で、賃金も低い印象でした。
しかし、今はどうでしょう?
プログラミングが義務教育の必修になるくらい、世の中にエンジニアリングという言葉が浸透し、国民の必須の素養となってきました。また、その中でも優秀なエンジニアには法外な賃金が支払われているのも事実です。
また、エンジニアリングをするには論理的思考が必要だとされてきました、しかし、そういった思考はどんどんテクノロジーに打って変わってきています。
エンジニアに要求されていた論理的思考に置き換えられるものが、いわば、介護職における心、マインドなのではないでしょうか。
恐らく、私の妻のように介護という仕事にひたむきに人の自立支援を願う、そういった人のマインドを評価し、それこそをスキルと捉える時代が必ずくると考えています。
そういった本当の意味で心根の良い人材こそが、介護市場で重宝され、エンジニアの初任給のように高値の市場価値として評価されてくるのではないでしょうか。
さいごに
以上のように、今後介護職がいかに市場価値を高め、尊い仕事になるのかという点を論じてきました。
私は妻の待遇や社会的な地位、こういったものを上げてあげたいと思う一心で今回は記事にしましたが、書けば書くほど、同じようにジレンマを抱えている介護従事者がいると思うと、胸が痛くなります。
テクノロジーの進歩を忌み嫌うのではなく、利活用できる分野では積極的に活用していき、政府もこういった取り組みにより多くの補助金等を投じられるようになることを祈っています。
それでは、また。
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