厚生年金は会社員の「生命保険」だ。
- 2018.09.12
- 社会保険

どうもこんにちわ、結局、まじめなブロガーのINAZOOです~。
皆さん、生命保険には加入していますか?
独身の方であればあまり多くないと思いますが、結婚したり・子供が生まれたりすると、途端に加入傾向が高まるのが、生命保険です。それもそのはず、自分が亡くなったときの保障なのだから、独り身の時にはあまり考えませんよね。
つまり、生命保険に加入する最大の目的を挙げるのであれば、「自分にもしものことがあった時の、家族や子供のための備え」ということになります。
しかし、自分が死んだときの家族への備えは、なにも生命保険だけではありません。
ちなみに、めちゃめちゃ稼いでいるから、残すだけの資産がたっぷりある、という景気の良い話を指しているわけではありません。もっと身近で、誰でも備えられる、いや、なんならもう備えてますよ??っていう話。
それが、本日の話です。
会社員の方であれば、厚生年金保険に加入します。これは法人で使用されている方は漏れなく該当します。
さて、あまり知られていないのが、厚生年金保険の給付の一つに、この生命保険のようなものがある、ということです。
それが、
「遺族厚生年金」です。
厚生年金保険について
まずは年金制度を語る上での定番、この図 ↓ をご覧ください。
ご覧の通り、自営業の人、会社員の人、会社員の妻、みーんなが加入しているのが国民年金です。さ・ら・に、会社員の方(国民年金第2号被保険者)だけが、国民年金に上乗せする形で加入(強制)しているのが厚生年金です。
そのため、会社員の方であれば、国民年金の給付である「基礎年金」に加えて、2階部分である「厚生年金保険」も受けとることができるという点が、最大にしてシンプルな制度上の特徴です。
つまり、自営業者の方より純粋に年金額が増える、ということです。
さらに、1階部分である国民年金が上限ありの定額であるのに対し、厚生年金はもらっている給料に応じて、保険料が異なるため、後々もらえる年金額も報酬比例で変動してきます。したがって、シンプルに稼いでいれば稼いでいる分、年金額は上がる、ということです。
この時点で、厚生年金に加入するメリットとしては一目瞭然ですよね。
このように、2階建て部分に該当する厚生年金、という認識と、いずれも“老齢”に関するもの、という認識は一般的にも広く知られているところであり、年金=老齢という固定概念を生んでいる箇所とも言えます。
しかし、厚生年金の目的条文にも記載されていますが、厚生年金保険は、“老齢”に関する給付が全てではありません。
厚生年金保険法
第一章 総則
第一条 この法律は、労働者の老齢、障害又は死亡について保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的とする。
お分かりでしょうか?
障害又は死亡についての保険給付を行い、労働者及びその遺族の生活の安定と福祉の向上に寄与することを目的としている、
つまり、老齢だけじゃない!!ということ。それでは、詳しく遺族年金について見ていきます。
遺族厚生年金について
厚生年金は老齢を支給事由とする給付だけではない!という話をしましたが、会社員が亡くなったときに、その遺族に支給されるのが、遺族厚生年金です。
ちなみに、年金制度の1階部分にあたる国民年金からも遺族基礎年金というものが遺族に支給されます。そのため、厚生年金被被保険者であれば、その両方を遺族に残すことができるということになります。
また、子供のいない夫婦であった場合は、遺族たる妻が40歳から65歳の内に、遺族厚生年金と併せて、584,500円(年額)が加算される制度もあります。
遺族厚生年金の支給要件
次に遺族厚生年金の支給要件についてです。
遺族が遺族厚生年金もらうことができるには、次の3つの内いずれかを満たしている必要があります。
シンプルにいうと、厚生年金に長く加入していた場合も、加入期間が短い場合も、いずれも出るよってことです。
支給要件
被保険者 or 数年前まで被保険者だった者が死亡。
ちなみに、数年前まで被保険者だった者というのは、厳密にいうと「被保険者期間中の傷病がもとで初診日から5年以内に死亡したとき。」という意味になります。要するに、被保険者だった時の傷病で、死んだ時ってことです。それも初診日から5年以内。
1級・2級の障害厚生年金を受けられる者が死亡。
それはそうですよね、障害を負いながらも会社員として頑張ってこられた方、こんな方が亡くなられた時に、保険料払ってたかとかを要件にするのは人に非ずですわ。ちなみに、厚生年金には、さらに障害等級の3級というものがありますが、この等級の方は該当しません。
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ちなみに、死亡者が上記①と②に該当する場合は、「短期要件」と呼ばれ、比較的被保険者期間が短かった方が亡くなった場合の話になります。さらに、①の場合は、「保険料納付要件」というものも求められます。
簡単に言うと、一般の厚生年金被保険者であった場合は、ある程度の保険料を払っていた期間が必要ということです。
もう少し詳しく言うと、すべての国民年金被保険者としての期間(20歳~60歳なら強制加入)の内、しっかり納付していた期間が全体の3分の2以上(死亡日の前日において)ないといけませんよ、という条件が必要になります。
但し、平成38年4月1日前であり、死亡日に65歳未満であれば、直近1年間に未納・滞納がなければもうそれでいいよ、ってことになってます。要するに、当面は65歳未満であれば、1年間滞納してなければOKってことです。
老齢厚生年金の受給資格期間が25年以上ある者が死亡。
これはいわゆる、「長期要件」と呼ばれるものです。すでに長期間被保険者として保険料を納付していますので、先の保険料納付要件は求められません。
つまり、加入していた実期間に応じて支給額が決まるということです。そのため、当然のことながら、①や②より多くの額が支給されると想われがちなのですが、ごく稀に①、②の場合よりも受給額が少なくなってしまうケースもあります。
そうですよね、なぜ長期要件とも言うくらい、長い間加入していた要件に該当するにも関わらず、比較的若い被保険者よりも安くなるんやっ!って話です。
これは、端的に言うと、短期要件の場合は、その該当者の特性上(比較的若い)、年金額の計算に300月 (25年) 加入していたとみなすという保証期間がつくことに起因してます。一方、長期要件の場合は、この300月保証が消滅します。
少しややこしくなってきましたが、この「受給資格期間」とは、国民年金の第1号、第2号(=厚生年金加入)、第3号被保険者期間すべてのことを指します。つまり、「長期要件」に該当( = 受給資格期間25年以上)したからといって、必ずしも、厚生年金加入期間が25年以上あるとは限りません。
例えば、老齢年金の受給資格期間がすでに20年程ある人が、会社を辞めて国民年金の第1号被保険者になったときに死亡した場合などがそれに当たります。
Aさん
会社員時代 → 21年 (国民年金2号(21年) , 厚生年金1号としての期間(21年))
フリーランス → 4年 (国民年金2号としての期間(4年))
受給資格期間 → 計25年(内、厚生年金1号としての期間は21年)
この場合は、受給資格期間25年は満たしているので、長期要件該当となります。また、長期要件該当なので、300月(25年)保証がないため、この人の遺族に支払われる遺族厚生年金の額の計算の基礎は、252月(21年)となります。
Bさん
会社員時代 → 10年 (国民年金2号(10年) , 厚生年金1号としての期間(10年))
受給資格期間 → 計10年(内、厚生年金1号としての期間は10年)
この場合は、受給資格期間25年はありませんが、厚生年金被保険者時に死亡したので、短期要件に該当します。つまり、「300月保証」が適用され、厚生年金被保険者期間は300月(25年)とみなされた上で計算されます。
しかし、逆のことを言えば、短期要件は300月保証故に、300月が上限ですが、長期要件に該当するくらい長い間勤続していれば、計算の基礎となる厚生年金被保険者期間に上限がないので、青天井で年金が増えることになります。
遺族厚生年金の支給額
遺族厚生年金は、先述した通り、国民年金たる遺族基礎年金に上乗せする形で支給される場合と、厚生年金から単体で支給される場合の2パターンがあります。

パターン①とパターン②の違いは、生計を維持している子がいるかいないかになります。つまり、子供のいない夫婦には遺族基礎年金は出ません。そもそも、遺族基礎年金が支給される遺族というのが、子、あるいは子のある配偶者のみです。
但し、先述した通り、子のいない夫婦二人だけの場合は、夫の死亡時に妻が40歳以上であれば中高齢の寡婦加算(584,500円 / 年額)という制度もあります。
しかし、遺族厚生年金は遺族の生活保障が目的ですので、子供のいる場合や複数の子供のいる場合に比べて多少の差が出てしまうのもしょうがないといった印象でしょうか。

気になる、遺族厚生年金の支給額ですが、基本的には死亡した者の老齢厚生年金の4分の3になります。そして、上の図にも記載されていますが、老齢厚生年金自体が、報酬比例という特徴があるので、もらっていた給料・賞与の平均と、被保険者期間の月数に応じて金額が異なります。
遺族の範囲
さて、遺族厚生年金を受給できる遺族の範囲についてですが、死亡の当時、死亡した者によって生計を維持されていた、
配偶者・子・父母・孫・祖父母が対象となります。
なお、子、孫については、高校卒業前(18歳到達年度の年度末を経過していない者)、または20歳未満で障害を持った者に限定されます。
また、遺族が妻の場合は生計維持だけで事足りますが、夫・父母・祖父母については、55歳以上が対象となり、支給開始にいたっては60歳からとなります。
とはいっても、若い妻が受給権を取得した際には、結構際限なくもらえてしまうので、30歳未満の子のない妻に関しては、5年間の有期給付となっています。
受給シミュレーション
遺族厚生年金の支給額については、ご紹介した支給額の計算式を見てみても、かなり複雑なのがお分かりかと思います・・・。それもそのはず、子のいる場合・いない場合、妻の年齢など、様々な要素が絡み合って金額が決まりますので、複雑になってしまうのも納得です。
そんな場合には、次のようなサイトを参考にしてみると、だいたいの支給額などがイメージできますので、おススメです!
遺族年金の計算方法を解説|早見表・エクセルシミュレーション付き
※随時、おすすめリンクは編集します。
また、毎年お手元に届く、年金定期便を用意した上でこういったサイトを参考にすると、より具体的なシミュレーションが可能になります。
実際に遺族たる家族にどれだけの年金を残せるのかを、ざっくりでも把握しておくと、自分が生命保険に入るべきなのか、将又、どういったプランの保険に入るべきなのかが、より明確にイメージし易くなってくると思います。
会社員であるメリットを最大限活かして、大切な家族のために最適で安心な老後の準備をしてみてはいかがでしょうか?
それでは、また!
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